――ジューッ。
鶏肉とバターの焼ける匂いが香ばしい。
それにどんどんお腹が空いてきた。
「すごい、お肉焼きながらお味噌汁も作ってるの?」
「あ、棗くんそこにいたんですね!すみません、あと煮物を作ったら出来ますから」
気づかなかった、いつからいたんだろう。
もしかして、テレビ見ててって言ってからずっと?
「煮物まで作ってくれるの?」
「人参と大根があったので!口に合うといいんですが……」
そういえば、こうやって誰かと家で話すのは久しぶりだな。
って、ここは私の家じゃないんだけど……。
「俺、手料理なんていつぶりだろう!楽しみだなぁ」
「ふふっ、そんなに楽しみにされると、緊張します」
でも、何でだろう……。
こうやって、作ったご飯を楽しみにしてくれることが嬉しい。
お父さんは、私がどんなに料理を作っても、美味しいとは言わない。
時には、一口も口をつけないこともあった。
家族でも、他人みたいに会話のない家。
それが、寂しくてたまらなかったんだ。


