「俺と一緒に暮らしてくれるかな?」

「しょ、正気ですか……先輩」

「ははっ、正気じゃなかったらこんなこと言わないよ」


いえ、その逆ですよ先輩っ。

見知らぬ女子高生と暮らそうだなんて、正気の沙汰とは思えない。


「大丈夫、家に泊めてどうこうするとか、きみを傷つけることはしない。だから、俺の所へおいで」

「あっ……」


不思議、本当に先輩なら大丈夫だって、根拠の無い安心感が沸いてくるから。

他に行き場所も見つからないし、それなら……先輩の傍がいいな。


「……本当に、迷惑じゃないですか……?」

「あぁ、美羽さんなら大歓迎だよ」


そう言ってくれた言葉に背中を押されて、私は先輩の手に自分の手を重ねた。


それを、強く優しく握りしめてくれる。

それが……月が綺麗な夜の、忘れもしない。

私と先輩との出会いだった。