「棗くん、私に掴まって!」

「うん、ありがとう」


棗くんの手を引いて、支えるようにテーブルの前へとやってくる。

棗くんは腹水や足の浮腫が強く、歩く度に息苦しさと足の痛みを伴うせいで、長い距離を歩く時はついに車椅子で移動になってしまった。


「いただきます」

「はい、召し上がれ!」


明るい声で棗くんにご飯を進める。

すると、棗くんはパクリと豚しゃぶを口に入れた。


「ん、美味しいな」

「良かった……食べたいものがあったら、何でもリクエストしてね」

「うん、考えておくよ」


良かった……棗くん、今日は食欲あるみたい。

いつもなら残さず食べてくれていたご飯も、最近は吐き気が強くて、食べれてなかったもんね。

本当に、良かった……。


2人でご飯を食べながら、幸せを感じていると……。



「美羽、俺行きたいところがあるんだけど……」

「えっ、どこどこ??」


私が箸を置いて身を乗り出すと、棗くんは笑う。


「うん、実はね……」


そう言って、ウキウキしながら棗くんが提案してきたのは……。