「悪かった……今までっ……父親らしいことしてやれなくて、本当にっ……」


「どんなに傷ついても……私がお父さんのことを大切に思う気持ちに、変わりはないよっ」



手を広げたお父さんに抱きつくと、強く抱きしめられる。

久しぶりに感じた、お父さんの温もりだった。


「これからは、母さんの分まで幸せになろう。この世界にはいなくても、俺たちが忘れさえしなければ……」

「お母さんは傍にいてくれる……」


そう、たとえばこの誕生日会のように、ふとした瞬間にお母さんを思い出す。


お母さんが私たちに残してくれたものは、たくさんあって、とても大きい。


お父さんとの絆を繋ぐのは、お母さんの存在だった。


「あぁ、思い出をたくさん作って、いつか空へ旅立つ日が来たら……その時のみやげ話にしてあげようか」


そう言ったお父さんは、幼い頃に見た、優しい笑顔のままだった。