【美羽side】
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「ううっ………」
私が家を飛び出した果てにやってきたのは、あの日、棗くんと出会ったごみ捨て場の前。
私はそこに体育座りをして泣いている。
惨めで、ひたすらに家族の絆を望んだ自分が馬鹿みたいに思えて悲しかった。
「お母さん……」
どうしていなくなっちゃったの?
お母さんがいてくれれば、お父さんはずっと私を好きでいてくれた?
それとも、最初から私のことなんて……愛してなかったのかも。
「要らない存在……」
自分で言って胸がズキンッと痛んだ。
もう、何も考えたくない……。
傷つきたくなんてないよ……。
悲しみばかりの世界から目を閉ざしたくて、私は膝の間に顔を埋める。
そんな時に、ふとジャリっと地面を踏みしめる音が間近に聞こえた。
「可愛らしいお嬢さん、顔を見せてよ」
「あ……」
聞き覚えのある優しい声に、自然と顔を上げる。
するとそこには、月を背に、サラサラの黒髪を靡かせる……優しい眼差しの人、棗くんの姿があった。


