「そういうものか……?」

「だって、お父さんもこうして今、娘の美羽さんを心配してるじゃないですか。愛してなきゃ、こんなふうに悩んだりしませんよ」

「あ……きみにそう言われると、そう思えてくるな……」


苦笑いで俺を見るお父さんに、頷いてみせる。

お互いに、歩み寄る距離感がつかめないだけ。

それだけ、2人の心の傷が深かったんだ。


「生きてさえいれば、何度でももつれた糸は解けるし、切れた絆は繋げられると……思います」


そう、生きてさえいれば……。

そして、その命が消えても、深い想いさえあれば、永遠に繋がっていることが出来ると信じてる。


そう思った途端に美羽の姿が頭に浮かんで、胸が重く切なく締め付けられた。


「やけに説得力があるな」

「そうですか?それなら……お父さん、美羽さんを連れ戻してくるんで、次こそ素直になって下さいね」

「きみは……ふっ」


俺の言葉に目を見開いたお父さんは、吹き出すように笑う。



「……棗くん……だったな。分かった、きみの言葉を信じてみたい。美羽のことを頼むよ」


そう言って、お父さんは俺に深々と頭を下げた。

それに、尚更頑張らないとと自分を奮い立たせる。


「任せてください」


ハッキリとそう告げて、俺は美羽を追いかけた。

世界で一番大切な人を、この命がある限り幸せにするために。


だから、今きみを迎えにいくよ。

この世界のどこにいても、暗い闇の中でも……。