「美羽さんが、今日の誕生日会をやりたいって言ったんですよ」
「え……美羽が?」
驚いているお父さんに笑顔で頷く。
「美羽さんのお母さんが、誕生日は大切な日だからって言ってたこと、だから毎年欠かさずにやってたんだって……」
「……確かに、聖子の口癖だったからな……」
「それを思い出したって言ってました。プレゼントだって、お父さんのために必死に選んでたんです」
あの時の美羽の顔は、不安と期待に揺れていた。
それは、この冷めきった関係を変えるきっかけを望んでいたからだと分かった。
だからこそ、俺にしてあげられることは何でもやりたい。
誰より愛しい女の子のためだから……。
「俺は、美羽にそんなふうにしてもらえるような……立派なな父親じゃない、なのに……」
「美羽さんにとって父親はお父さんしかいないんです。どんなにすれ違っても、無条件に愛、慕うのが家族でしょう?」
俺は、信じてるんだ。
どんなに離れていても、想いは消えない。
それが、お互いに悲しみを伴うものだとしても、俺の意思を尊重してくれた家族もいるのだと、知っているから。
美羽にはまだ話せていない、俺の秘密……その経験から言えることなんだけど。


