「……俺に、追いかける資格は無いからな。早く、美羽のことを追いかけてやってくれ」
お父さんはこちらを振り返らずにそう言った。
でも、その言い方は明らかに……。
美羽のこと、心配してる父親のセリフだよな……。
素直に甘えられない所は、美羽にそっくりだと小さく笑う。
「なんで、美羽に冷たくするんですか?」
「……美羽を見てると、聖子のことを嫌でも思い出すからだ。それが辛くて……酒に逃げて、美羽に当たってしまう……」
どこか遠い目をして見つめる先には、仏壇がある。
あれはきっと、美羽のお母さんのものだろう。
「優しくしてやりたくても……それが出来ずに、傷つけてばっかりなんだっ」
まるで、泣いているかのような声。
そんなお父さんの傍に寄って、目の前にしゃがみ込んだ。


