「伝えたいことは……なんにも伝わらない……っ。お父さんは、いつもいつもっ!!」
想いが溢れて、言葉に詰まる。
涙だけが馬鹿みたいにたくさん溢れた。
「いつもっ……お母さんの事ばっかり!!私の事なんて、少しも見ようとしない!!」
「美羽、落ち着いて」
泣き叫ぶ私を、棗くんが後ろから抱きしめる。
その手をやんわりと解いた。
「今日だって、棗くんにも手伝ってもらったのに……どんなに伝えようとしても、お父さんにはっ……」
「美羽……」
心配そうな棗くんの顔に、私はぎこちなく笑みを返す。
「私ばっかりが前みたいに幸せな家族に戻れることを望んでる。でも、お父さんはもう……一人でもいいんだ」
「…………」
お父さんは、無言で俯く。
それを見てどんどん心が冷たくなっていくのを感じた。
「ねぇお父さん、私たち一緒にいない方が、いいのかな……」
お願い、傍にいてもいいって言って?
そうしたら、もう一度だけ向き合ってみるから。
だから、否定しないで……。
そんな願いを込めて、試すように聞いた言葉に、
「……そうかもな」
容赦なく告げられる冷たい一言。
それに、私はゆっくりと後ずさった。


