「お、おめでとう、お父さん!」
「……おめでとう?」
「今日は……お父さんの誕生日だから……」
お父さんも自分の誕生日を忘れてたのか、ハッとしたような顔をした。
そして、リビングの壁にかかるカレンダーの日付を確認する。
「お前……」
「お父さん、また一緒に……」
一緒に誕生日をお祝いしようよ。
前みたいに、家族に戻りたいよ。
そう伝えようとした言葉は……。
「ふざけるな!!」
「えっ……」
お父さんの怒鳴り声によって、掻き消される。
喜んでくれると思ったのに、返ってきた反応があまりにも予想に反していて、何も考えられなくなっていた。
「母親が死んだって言うのに、誕生日なんか……おめでとうなんか言えるわけないだろ!!」
「っ……でも、こんな時だからこそ……っ」
「お前、母親のことを忘れようとしたんだな!?こんなものっ!!」
お父さんは壁に書けられた折り紙のリースや飾りをベリッと剥がして破り捨てる。
――ズキンッ!!
「どうして……」
ゆっくりと、頬に涙が伝った。
悲しくまるで涙のようにハラハラと、折り紙は床へと落ちていく。


