「美羽、緊張してるね」
「あ……」
そう言った棗くんは、私の握りしめた手を、外から包むように両手で握る。
ふわりと、棗くんの体温が不安を和らげていった。
「心から大切に想う気持ちが、伝わらないわけない」
「棗くん……はい、頑張ります」
棗くんの言葉に、励まされながら頷いた時、
――ガチャ。
玄関の方から鍵が回る音がする。
ビクリと肩を震わせると、棗くんが私にクラッカーを手渡した。
「大丈夫、怒られる時は一緒だ」
「あ……はい!」
イタズラに笑う棗くんに私は笑い返すと、クラッカーの紐に手を伸ばす。
――バタンッ。
リビングの扉が開いた途端に、クラッカーの紐を引くと、パンッ、パンッ!という軽快な音とともに紙吹雪が舞った。
「なっ……んだ……?」
……伝えなくちゃ……。
ずっと、言いたくて言えなかった言葉。
それに目を見開くお父さんに、私はドキドキしながら、震える唇を思い切って開く。


