「棗くんがいない!!」

「もう、今日こそ私のお弁当食べてもらおうと思ったのにー!!」


どうやら、棗くんは女の子たちから逃げてきたみたいだ。

毎度ながら、大変だよね。

バレないといいんだけど……。

女の子たちが諦めてその場からいなくなるまで、私まで緊張してしまった。


「もう大丈夫ですよ、棗くん」

「ごめんね、美羽……それから、お友達も」


申し訳なさそうに、棗くんは私と真琴ちゃんを見つめる。

そして、疲れたように立ち上がった。


「大変ですね、棗先輩……お気の毒に」

「ありがとう、えと……きみは?」

「宮木 真琴です」


簡単に自己紹介している二人を見守っていると、棗くんが私の隣に座った。


「ふう……」

「お疲れ様です、棗くん……」


私は、自分の水筒のお茶を注いで、棗くんに渡した。


「ありがとう……」


棗くんは、そのお茶を飲んでホッとしたような顔をする。