ヤンキーやめます!


「よし」




ひとりごとをつぶやいて、鏡を持つ手に力を入れた。




そして鏡を自分に向けた。




「……嘘でしょ?」




一瞬、息をするのも忘れた。



ドラマの主人公のような、いかにも『女の子』って感じの女の子が、鏡の中からマヌケな顔ででこちらを見つめている。



これ、本当に鏡?



テレビの画面がここに張り付いてるんじゃなくて?



だけど、このバカみたいな表情は、まぎれもなくあたしのモノ。



これ、本当に鏡だ。



その証拠に、あたしが揺れると鏡の中の女の子もサラサラの黒髪を揺らして同じように揺れた。



信じられない。



こんなに清純そうな人になれるだなんて思いもしなかった。



今までのあたしはもういない。



あの男の子と話せる、同じところの人間になれたんだ。