私もきっと覚えておく。
あなたの温もりを笑顔を優しさを愛を。


それで私、生きていくから。





「時間だ」




許されるのなら。
もう少し。


躊躇いがちに離された身体。



涙を振るい、顔をあげにっこりと笑った。




「いってらっしゃい、尊」




笑顔で告げたのは別れの言葉じゃない。
それはきっと、私の最後の抵抗だった。



「―――いってきます。亜子」




尊も、私の心を悟ったのかそう答えてくれた。
ああ、泣くな私。


きっとこれから先、泣く時間なんてたんまりとあるのだから。
今だけは。


今、この時だけは。




尊はいつもの無邪気な笑顔で。
最期ににっこりと笑うと、ふと電気が消えるように姿を消した。




どうしてこんな未来なら。
私は彼を好きになってしまったのだろう。



それでも、後悔だけはしたくない。
いろんな感情が浮かんでは消え浮かんでは消え。
どうすることもできない。