遊佐先輩に指摘され私は口を噤んだ。
髪は濡れて、化粧だってよれてる。

さすがに化粧ポーチまでは持ってきてもらえなかったし。
髪はさすがに乾かせない。


でも・・・。



「荷物くらい持ってきてやる。だから、今日は帰れ」

「・・・なんで」

「あ?」

「なんでそんな優しくするんですか?」



きっと、遊佐先輩ならいつもみたいに憎まれ口の一つくらい叩かれて、さっさと仕事に戻れって言われると思ってた。
そう、言ってくれると思ってた。

それなのに、そんな風にちょっと優しいことを言われたら・・・。
張り詰めてた心が簡単に解けてしまいそうになる。



「優しくって・・・。そんなんで仕事になると思ってんのか?自分の顔よく鏡で見ろよ。使いもんにならないから帰れって言ってんだ」

「・・・わかりました」





ギュッと両手に抱え込んだ制服を握りしめる。
だったら最初から、そういう言い方でいってくれたらよかった。

ああもう、私って本当に勝手だ。