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城葉犯研の一室。
所員は所長以下全員でも九人なので、それぞれに部屋が与えられている。
城葉犯研は天科直轄だが、天科グループのトップである天科全と面識があるわけではなかった。
例外で、所長と流夜の二人だけが、顔パスで全に逢うことが出来る。
「あんた年下に絡むのやめろよ」
「お前がさっさとうちに入ってれば俺まで十三に責められなかったんだよ」
流夜が(一応)私室して使っている部屋に、天科全がやってきていた。
と言うか、たまたま流夜が犯研へ来ると部屋にいた。
常に多忙な全は、たまに十三桜の愚痴を言いに来たりする。傍迷惑。
「桜学もここも、あんたの範囲内だろ」
流夜が書類束を本棚に戻しながら言うと、全は苦い顔をした。
「あいつら、桜学は蒼のテリトリーって認識なんだよ」
「いや、今はあんたが理事長だろ」
全は十三が在校生だった頃――流夜たちは中学生だった頃――は、理事のひとりに過ぎなかった。
それから流夜も関知していない間に理事長になっていた。
クーデターでも起こしたのだろう。



