吹雪も咲桜のことは、大人しい部類に見ていたから、ナンパ男たちが去って数秒してからはっと意識を取り戻したくらいだ。
ギリギリ音が鳴りそうな緩慢な動作で咲桜を見ると、顔の前で両手を合わせていた。
『さ、咲桜ちゃん……?』
『すみませんー。この前吹雪さんに助けてもらったから、今度は私がと思いまして』
『……僕って咲桜ちゃんの彼女だったの……?』
『えーと、どうあっても吹雪さんを彼氏扱いしては駄目だったので……矜持を傷つけてしまったらごめんなさい』
深く頭を下げられた。
そういう理由で『彼女』って言ったのか……。
複雑だ。



