『鬼よりも美しいものってありますかね?』 『花のような美しさはあるけど美しい花はないって言うよね』 『花と鬼を同列にしますか。そうですね――星とか月はどうですか?』 『いや――光で言うなら、月光みたいな白い光じゃなくて黒く光を呑み込む方だから――』 『黒光り?』 『殴るよ』 『撤回します。ブラックホールですね』 その後もそんな会話が延々続く。 「………」 「………」 ((何を話しているんだ⁉)) 降渡お手製の盗聴器を挟んで、二人の時間は停止していた。 変な汗が出る。