「………」
思わず冊子を取り落としてしまった。足に当たった。地味に痛い。
それってまるっきり返事じゃないか。
「本当なのか? 誰だ? どんな子なんだ?」
「……なんであんたが興味津々なんだよ」
「興味あるよ。性別女性では斎月以外眼中になかったお前がまさか、なあ」
「斎月は性別男扱いだって言ってんだろ。女性として見たのはあいつだけ」
流夜がそう返すと、全は哀れなものを見る瞳で見て来た。
「お前……教師辞めて正解だな。そこまで骨抜きにされてたんじゃ、すぐにバレて懲戒コースだぞ。あの鉄面皮がなあ……。なんだ? もう結婚するのか? 結婚するから辞めたのか?」
「………」
在義の娘、とは、なんとなく言いたくなかった。
いい加減うざくなってきた。話変えよう。
「……あんたさ、うちの事件、どこまで知ってる?」



