中学高校生の頃は龍生兄さんも華取の家に下宿していたから、龍生兄さんとばかりつるんでいたっけ。

……と言うか、在義兄さんの行動力についていけるのが龍生兄さんだけだったとも言うわ……。

傍目にはお婿に最高な在義兄さんだけど、かなり大変なお相手であることは覚悟上でお慕いしまくっている。

箏子母さんも、わたしが在義兄さんを好きなことは知っている。反対とかもされてない。

「兄さん、今日からお仕事?」

「うん。夜々ちゃんも学校、気を付けてね」

「うんっ」

在義兄さんのお父さんとお母さんは、もう亡くなっている。

在義兄さんが大学生の頃のこと。

それから、兄さんはずっと一人暮らし。

兄さんの就職先は、警視庁。

国家試験に合格した方だから、幹部候補のキャリア組、というやつらしい。

同い年の龍生兄さんはノンキャリ、という現場の刑事になるらしい。

――いつか、在義兄さんに相応しいって思われるような、そんな女性になりたい。

仕事へ向かう在義兄さんの背中を見送って、改めて、そう思った。