桃子は、恐怖に呑まれたように顔を強張らせた。


ごめんなさいね。これでも、在義も育てた身なのよ。


「わたくしは、お前とお前の娘を強く育てます」


「………え?」


「お前は在義の妻、なのでしょう。そしてお腹の子は在義の娘。並の気概では潰されてしまいますよ。

だから、わたくしは、お前に厳しいことも言うし、辛くあたることもあるでしょう。

ですが、決して嫌っていたり排除するためではないと承知していなさい。そして、お前の娘にも同じように接します。

――世間に、お前たち二人を認めさせます」
 

在義が仕事を辞めた理由は、近所には知られてしまっている。


桃子が奇異の瞳で見られていることも知っていた。


だから、それに負けないように、圧し潰されないように。


「強くなりなさい。在義とともに、いたいのなら」
 

桃子は少ししてから、唇を引き結んで肯いた。