「どうした?」
 

いきなり咲桜が変な声をあげた。


「忘れてた……」


「何をだ? 忘れ物?」



「じゃなくて……私の、その……彼氏が流夜くんだって、絆先輩に言うタイミング逃したままだった……」


「ああ。あいつはそういう道徳っぽいこと、五月蠅いからなあ」


「ちゃ、ちゃんと話すね。これは私が言うことだから」


「わかった。頑張れ」
 

頑張らなくていいと言った流夜も、今はこうして背中を押せる。。


時間が停まってはいないことを感じる。


「じゃ、五月二十日な。それまでは恋人で同棲。いいか?」


「う、うんっ」
 

遠かった夢が、この子が、今はこの掌。
 

わざと離れるのはつらかったけど、頑張ってよかった。


『咲桜』と出逢った日。


大切を、また一つ重ねよう。