「咲桜? 斎月に変なことでも吹き込まれたのか?」
「そんなんじゃないよ。……色んな境遇があるなーって、話した」
「………」
咲桜の言わんとするところがわかったのか、流夜は返事をしなかった。
「運命は、自分で決めて言いって、言われたね」
「……ああ」
「だからね、斎月とも、運命ってことにしておいて。私も、流夜くんも、斎月に出逢ったのは」
「え……あれはそういう括りに入れたくないんだが……」
流夜の声は引いていた。
「いいから。……運命だったら、斎月が流夜くんに近くても、ゆるせるから。……お願いします」
必然として、大和斎月はこの人と出逢ったのだと、割り切らせてほしい。
じゃないと――見えないほど高い、どれほどの差の前に、泣いてしまうかわからないから。
いくら嫉妬するのがバカバカしい相手でも、男扱いでも、咲桜にとって斎月は『女の子』だ。
「……わかった。そうする」
「うん」
その言葉一つで、一喜一憂してしまう心だから。