「――――」


「流夜くん、桃子母さんに言ってくれたでしょう? 生きてることを後悔させません、って。その、言葉通りになったよ」


「………」
 

流夜は無言で咲桜の頭を押さえるように抱きしめた。


「わっ、流夜くんっ?」
 

互い違いになっていて流夜の顔は見えない。


ただ、流夜は言葉せずに咲桜を抱きしめることがよくあるので、咲桜もいつものように流夜の背中へと腕を廻した。
 

こういうときの流夜は、本当に言葉に出来ない感情を持っているのだと感じる。


「私と、出逢ってくれてありがとう。……流夜くんがいてくれるから、私、いつも幸せだよ」


「………俺の方こそ」
 

腕の力が緩んで、身体が離れた。


流夜が咲桜の頬に手を当てて、優しい顔で見て来る。


「生まれてきてくれてありがとう、咲桜。俺も、幸せだ」

 
……額同士を合わせて、唇を重ねた。