「咲桜、頼、取りあえず移動するぞ。これ以上遅らせられないだろう」


「悪い、神宮」
 

咲桜の肩を抱いて、もう片手で頼の後ろ襟首を摑んで、流夜は二人を下がらせた。


この状況では、すぐに式場に戻るのは厄介そうだ。


「咲桜!」
 

笑満が声をはりあげた。自然、その場の視線も集まる。


「あの……ありがとう、咲桜も、頼も。二人のおかげで私……遙音くんと一緒にいることが出来るよ」
 

満面の笑満、咲桜は唇を噛んだ。泣きそうになっているのは流夜にもわかった。
 

けど咲桜は、涙は見せない。


「当然! おめでと、笑満!」


「おめでと」
 

頼もぶっきら棒に返した。
 

みんな、笑みをたたえながら。
 

――遙音が先に式場に入る。


結局咲桜と流夜、頼は、式場の外から入場を見守って、そのあとそっと場内へ入った。
 

笑満と遙音の結婚式は、笑顔と涙に包まれていた。