「……うん。俺も、神宮が教師になってなきゃ、笑満ちゃんと逢うの、もっと遅かったかもしれない」


「先生と同じこと言ってるね」


「神宮と? あいつ何言ってたっけ?」


「ほら、結婚式のときにさ、先生がマナさんに言ってたでしょ? マナさんが仕組んでなかったら、咲桜に逢うのがもっと遅かったかもしれない、って」


「あ。……そういや言ってたね」


「でも――遅くなっても、あたしに『逢う』って思っててくれたんだ?」


「そりゃ――笑満ちゃんだし」


「でも、全然接触してくれなかったよね? あたし、忘れてるなら思い返させない方がいいかなって思ってた」


「忘れるわけないよ」
 

力強く遮って、そっと、遙音が笑満の指先を握った。


ほどよい熱のある指先で繋がる。


「ずっと、大事にしてたんだ。思い出の中の笑満ちゃんでさえ、俺の支えだった。

……笑満ちゃんが藤城に入学してきて、笑っててくれて、本当に嬉しかった。俺も、また、前みたいに一緒にいたいって思ってた。

でも、俺の方こそ、笑満ちゃんに嫌なこと思い出させたら嫌だったから、近づかなかった。

……神宮と咲桜が付き合わなきゃ、話すのも、もっと遅かったかもしれないね」