「やっぱり遙音くんにとっての家族って、先生たちなんだね」
 

コトン、と軽い音を立てて、リビングの机にマグカップが置かれた。


「え? どうしたの、急に」
 

ソファで仕事中だった遙音が顔をあげると、笑満が微苦笑した。


「だって、親族席にいてほしいって思うくらいなんでしょ?」


「それは……あいつらは、正直どういう名前がつくかわからない。師匠とか、先輩とか、そういう感じ――だけじゃ、ないから」


「うん。その答えが、『家族』なんじゃないかなって、思ったよ」
 

遙音が書類をどかしてスペースを作ったので、笑満は遙音の隣に座った。


「あたしの傍には咲桜がいたからさ、家族に必ず血の繋がりがいるとは思わないできたから。あ、先生たちが家族なのが嫌ってわけじゃないよ? むしろ、遙音くんを独りにしないでいてくれた先生たちには、感謝してる」