「貴方もご機嫌ですね」
 

城葉犯研の守衛を務めているのは、警察庁の長官だった人だ。


柔和で人のよさそうなシワの刻まれた面いっぱいに笑みを浮かべている。


「仕事中から嫁に逢えましたからね」


「いやあ、華取くんの言う通り、随分人間らしくなりましたね」


「そうですか? 貴方も機嫌よさそうですね。天下りでも潰したくなりましたか? 手伝いますよ」


「そういう悪ガキなとこは変わってませんねえ」
 

にこやかを崩さない面に、流夜は柳眉を潜めた。


「……狸ジジイって言ったの、まだ根に持ってるんですか」


「初対面の小学生に言われたのは衝撃でしたなあ。せっかく旧友に逢いに行ったのに」


「初対面から小学生のガキに『貴方』なんて声をかけるような怪しいおっさん、警戒していいでしょう。ましてや自分の祖父を解雇(クビに)したと知ってる人ですよ」