当事者である咲桜は詳細を知らなかったので、確認する。


『日義の飼い主』と呼ばれていることは知っていたけど。


「そうだよ。お前のこと話してるとこに遭遇したことあったけど、最後には、『華取は日義の飼い主だもんな……』で、みんな諦めてた」


「ふーん。じゃあ頼に感謝だね」


「えっ! 咲桜さん、そこ感謝でいいんですかっ?」


「いいですよ? 私も在義父さんの仕事隠してましたから、目立ちたくなかったし。まあ、頼が傍にいることである意味目立ってましたけど」


「悪目立ちだったな」


「ほんとにね」
 

肯き合う夫婦を見て、所員は大きく肯いた。お二人が仲好さそうで、何よりです。


「――って、咲桜さん、あの日義頼の飼い主、だったんですか……?」
 

あの、って言われた。


「周りはそう言ってましたけど、ただの幼馴染です。頼が私に反抗出来ないような弱みを握っていたってだけです」


『………』
 

今度は返ってくる言葉もなかった。
 

――この日の会話を機に、所員の中で咲桜に少しながら惹かれていた心は、木っ端微塵に砕かれた。
 

元より、流夜が相手というだけで勝ち目などないとわかっていたけれど。