流夜が風邪気味だと遙音に聞いた咲桜が、流夜のアパートを訪れた日。


それまで廻っていた歯車が、別のかみ合いを見せた。


咲桜はその日、在義に電話している。


もしあのとき、流夜のところのいることを許されていなければ、流夜に近づくこともなかったかもしれない。
 

今日は、その結果の一つだ。


「……そうだったね。でも、流夜くんだと決めたのは咲桜だ。いい人を、見つけたね」


「うんっ。在義父さんの娘だからね」


「……ああ」
 

扉が開く。


その先で待っているのは、いつも咲桜だけに向かって差し伸べられた手。
 

今日も、その手を取る。


自分の手を重ねて、そっと握り返す。
 

誓うのは、今まで傍にいてくれた、助けてくれた、見守ってくれた、大事な人たち。
 

一生の約束を、大すきなみんなに、誓う。