+++

式場の前の扉。父が待っていた。
 

並んで、静かにその時を待つ。


「在義父さん」


「うん? どうした。ちゃんと似合ってるよ?」


「ありがと。……私の父さんになってくれて、本当にありがとう」


「……今言うのは反則だよ」


「さっきはこういうの、言える雰囲気じゃなかったでしょ」
 

咲桜がくすっと笑うと、在義もつられたように頬を緩めた。


「まあ、賑やか揃いだからね」


「うん。私、華取の家で育って、ずっと楽しかった。だから、これからもよろしく」


「当然。いつまでも咲桜は俺の娘なんだから」


「うん。あとね?」


「まだあるのか?」


「雨の日、流夜くんと一緒にいさせてくれて、ありがとう」
 

――あの日、歯車は狂った。