「るな」
「そうじゃないよっ! まさか誘拐⁉」
笑満が顔を真っ青にして叫ぶ。
「そんなことしないよ。捕まえる側の人がわんさかいるのに」
「じゃあ――まさかお前の――」
顔を紫色にして引き攣る咲桜。花嫁の表情じゃない。
「るなの年齢考えてよ。俺はずっと咲桜たちと一緒だっただろ」
頼はいつも通りのんたりとしている。遙音が止めに入った。
「頼、どうしたか説明しろよ。肝心なこと言わないから二人が誤解するんだろ」
うん、と、遙音の提言には素直に肯いた頼だった。
「るな、テロ事件に巻き込まれて家族を亡くしたんだ。頼れる身内はもういない。だから、俺が育てるって決めて連れて来た」
「「―――」」
咲桜と笑満が刹那、言葉を失った間に、頼が礼装のスーツのまま素早い動作で土下座した。



