「せん――


「ちょっと待って、咲桜ちゃん」
 

ストップをかけたのは夜々子で、そっと耳打ちをされた。


咲桜はその言葉を疑ったが、夜々子が咲桜に嘘を言うとも思えない。


夜々子はにっこりしている。


「あの……おばあちゃん……?」


「! な、なんですかっ」
 

答えた。
 

ちょっと怒ったように聞こえるのは、これが『照れ隠し』なのかもしれない。
 

実は箏子は、咲桜に『おばあちゃん』と呼んでほしかったようだ。


咲桜は習慣でずっと『師匠』と呼んでいたから――


「ありがとう、ございます。おばあちゃんのおかげで、私、お嫁に行けます」


「――――、き、着てみなさい。直すところがあるなら、早い方がいいです」


「はいっ」
 

咲桜は、笑顔で肯いた。