「ねね、流夜くんってマリッジブルーってなった?」


「は? どうした、急に」
 

リビングでのんびりしたまま、咲桜は両手にマグカップを包んで流夜は咲桜を後ろ抱きに包んでいる。


いつもの神宮家の光景だ。


「んー、笑満がね、喜びいっぱいなんだけど、少し不安がってるみたいで」


「……咲桜はなったのか?」


「私は楽しみでしかなかった。むしろ流夜くんを逃がさないために早く結婚したかった」


「………ごめん」
 

未だにこの話では流夜の立場は弱い。が、流夜はそれを変えようともしない。


相変わらず咲桜には怒らない人だ。


「いーよ。もう謝らなくて。今はこうしていてくれるんだから」
 

咲桜は自分の肩に廻っている流夜の腕に、こてんと頭を載せる。


すると流夜が、後ろから咲桜の首元に額を埋めるようにぎゅーっと抱きしめて来た。