(いや、なんかこれ重すぎないか? バレンタインには一度あげてるのになんで? って思われない? ……やっぱバレンタインとかぶせて渡すのはやめておこう……)
 

急に気合いがしぼんでしまったが、そのことばかりに囚われているのももったいない。


今、流夜は『隣にいることが出来る人』、になったのだ。
 

降渡から聞いた話なのだが、流夜は『仕事中』は一人になりたがる、と。


現在進行形の現場も真っ只中ならその中に立つほかないが、それ以外――過去の事件を洗い直しているときや、海外と機関とやり取りをするときは、一人で仕事をしていたそうだ。


でも咲桜は、そういう流夜のすぐ傍にいた。
 

高校一年生の頃、咲桜は流夜宅のアパートを何回も訪れている。


仕事をしている流夜は、咲桜が傍にいることをゆるしてくれた。


たまに、「休憩~」と言って咲桜を抱き枕代わりにしていたことさえある。


それは今も変わらない。


仕事中の流夜の傍にいられる。それは咲桜だけの特権だ。