高校の卒業式の日に流夜と再会して、結婚の話が進んで――咲桜は一つ、忘れていたことに気づいた。
 

バレンタインとホワイトデーだ。
 

一年生のときはそれこそ、それどころじゃなかったし、二年生のときも用意はしたけど自分の手では渡せなかった。


三年生の今年も、吹雪に頼んで渡してもらっていた。


卒業式を終えて、桜台法律事務所での準備と、結婚――その前の同棲の準備とに追われている中に埋没しかけていたが、今、流夜は目の前にいる。


手を伸ばせば届く距離に。


(どうしよ……ふゆちゃんが渡してないはずはないけど、受け取ったとも聞いてないんだよね……。ちょうど明日がホワイトデーだし、三年分? の意味で手渡ししてもいいかな……?)
 

出来たら、自分の手で渡したい。そして、すきだと告げたい。



もう恋人だし、婚約もしているけど、すきは何度だって言いたい。
 

明日は体よくそれが言える日だ。