「? いえ……ただ、思いついたので訊いただけです。全然姿も見たことがないので、失礼な話ですがもう亡くなっていらっしゃるのか……と」
 

流夜が答えると、在義は長くため息をついた。どうしたんだろう……。


「あの……まずいことを訊いてしまいましたか……?」
 

在義の反応が尋常ではない。


「いや……まあ、どこからばれるかわからない話でもないから、言ってしまった方がいいかな……」
 

ふう、と最後にもう一つ息をついた。


「夜々ちゃんの父親――箏子先生の旦那はね、夜々ちゃんが生まれて間もない頃にいなくなってしまったんだ」


「いなく……? 事故か事件ですか?」
 

そして亡くなられた――?
 

重ねて問うと、在義の顔色はどんどん悪くなる。


「いや、家出というか、……その、駆け落ちというか……」