卒業式の日に、在義からの時間指定の呼び出し。


流夜はこの二年の間、神宮家事件のことで呼び出されてはほぼ待ちぼうけを喰らわせられた。


謝ってはいたけど、たぶんこれ咲桜を一人にしたことへの嫌がらせも入ってるよな……と邪推したものだ。
 

出来るだけ早く二人で暮らしたい。


それは同じ意見だったようで、もしかしたら今日が、咲桜が華取家にいる最後になるかもしれない。


咲桜は少し気落ちした風に見えたが、「じゃあ今日はたくさんご飯作る!」と前向きな決意。


そのために、咲桜と流夜は余裕を持って華取家に来て、夕飯の準備をした。


咲桜の料理の作り方をよく見ていた流夜は、一般的な料理なら作れるようになっていた。


見ていただけとはいえ、いわば咲桜は流夜の料理の先生だろうか。


師に恵まれれば成長の幅は知れない。



+++



「おかえりなさい!」
 

咲桜は流夜と一緒に在義を迎えた。


華取の家で過ごす最後の日になるかもしれない。


流夜が隣にいる咲桜を見る在義の眼差しで、それがわかった。