「……つまりは咲桜ちゃんの優しさに付け込んだ、みたいなこと言ってるけど、いいの?」


「簡単に言うとそうね」


「咲桜ちゃんに申し訳ないとか思わなかったの?」


「少しは思ったけど……今、順調ならいいじゃない。降渡くんから報告もらってるわよ?」


「まあ……ねえ……」
 

二人の仲は順調だ。


流夜が無性愛者(エイセクシャル)――ヒトを愛することが出来ないタイプ――じゃなかったのも発見の一つだってぐらいだし。


そんぐらいあいつ、ヒトはただのサンプルだったし。


咲桜ちゃんにはバカみたいに惚れ込んでるし。


「今になると、上手い縁組だったってこと?」


「そうだといいわね」
 

自分の成就は願わないくせに、他人のことには世話焼くんだからなあ。


「どんなケーキ作ってくれてるのかなあ」


「そうだねー」
 

にこにこしているマナちゃん。


僕も成就なんて願わないから。
 

願わくば、命を生き切ってほしい。


自分の手で、終わらせないで。


「言い忘れてたわ。誕生日おめでとう、吹雪」


「ああ、僕も言ってなかったね。おめでとう、マナちゃん」
 

……おめでとう。マナちゃん。