お兄ちゃん。マナちゃんの年の離れた兄は、僕の父さんだ。
マナちゃんは僕の父さんに育てられたから、全く頭があがらない。
「じゃーケーキもらいに行こっかー」
「先輩のケーキは食べたいけど、あたしが行くって言ってないんでしょ? 門前払いされるわよ?」
「マナちゃんが一緒って言ってあるよ? 僕の誕生日なんでケーキください、って言ったけど」
「………」
マナちゃん、黙っちゃった。仕方ないから、さて龍さんとこ行くか。
水族館を出る辺りで、マナちゃんがまた小さく言った。
「……たまには、お線香くらいあげに帰ってよ?」
「大丈夫だよ。今日、朝一で郷の方向いて手を合わせておいたから」
どうか、マナちゃんがこの一年も、命を投げ出そうとしませんように、って。



