居間に置かれたベビーベッドの中で、小さな赤ん坊は姉の手にじゃれていた。


「う?」


「う? だって! 流桜が喋った~! 可愛い~!」
 

咲桜は案の定、妹にべた惚れになった。


予想していた流夜なのでそれほど驚かない。


けど、


(……まあ、妬けるけど)
 

なんで自分は、性別女性にしか妬かないのだろうか。


咲桜とのことで、男に妬いたことがないんだが。


あ、頼には一応妬いた……かな?
 

流桜子――夜々子は、流夜と咲桜から字をもらって『流桜』とつけたかったらしいが、『夜々ちゃんの字も入れたい』という在義の要請に妥協して『流桜子』になった――は、家族の中では『流桜』と呼ばれている。


九月に生まれた流桜子は、咲桜とは十九歳差の妹だ。