流夜が思い出したように呟いた。


それを聞いた咲桜はがばりと顔をあげる。


「じゃ、じゃあ……私が斎月と一緒に、作るっていうのは、いい、かな?」
 

料理は咲桜の得意分野だ。


それで、斎月の悔しく思っているところを少しでも補うことは出来ないだろうか。


だって、恋人が大事にしている人は、咲桜にとっても大切な人だ。
 

流夜は驚いたように咲桜を見て来た。


それから、ふっと唇の端を和ませた。


「そうだな。いいかもしれない」


「ほんとっ? 今度斎月のこと誘ってみる!」
 

咲桜が意気揚々と拳を握ると、流夜は苦笑して頭を撫でた。


「う?」


「……弟のこと、よろしく頼む」


「―――うんっ!」
 

その微笑を見て、きっと、流夜もどうにかしてやりたかったんじゃないかな、なんて思った。
 

顔を合わせれば説教しかしなくても、流夜が家族の呼び方をするのは、弟だけだから。


(だから、私も大事にしたいんだ)
 

すきな人の大事な人だもの。