その言葉にあたしはキョトンとして晃紀を見る。


「お前もあの事故現場にいただろ? 俺、道路を挟んだ逆側にいたんだ」


「そ、そうだったんだ?」


ドクンッと心臓が高鳴る。


晃紀があの場所にいたなんて全然気が付かなかった。


あたしは冷静さを装いながら「あたしは平気だよ」と、答えた。


「まさか目の前で小学生が跳ねられるなんてな……。ああいう時、咄嗟にはなにもできないもんだな」


晃紀はそう言い、落ち込んだようにため息を吐き出した。


「そうだよね。あたしも驚きすぎて、なにもできなかった」


返事をしながらあの時の光景を思い出す。


あたしは少年が跳ね飛ばされるのを見ても何もせず、そのまま背を向けて歩き出したのだ。


晃紀にその時の姿が見られていないかどうか、不安になった。


理央がチラチラとあたしに視線を送っている。


ボロを出さないかどうか気にしている様子だ。