「泥まみれの状態で教室に入って来るからビックリしたよ」


理央がそう言い、テーブルの上に出していたおやつに手を伸ばした。


ここはあたしの部屋。


学校が終わってすぐに理央を家に呼んだんだ。


今は報道陣の姿がなく、玄関から入る事ができた。


ニュース番組を見ていると、大きな立てこもり事件が起こったと伝えていた。


報道陣はみんなそっちへ行ってしまったのだろう。


人気のないモデルの自殺は、影に隠れ、いずれ消えていくだろう。


その事も安心したけれど、家に戻ると約束通りお母さんがいて部屋が綺麗になっていることに感激してしまった。


『なによ? 掃除くらいするわよ?』


けげんそうな顔でそう言うお母さんに、あたしはまた抱き着いた。


「ビックリしたでしょ?」


ヘヘッと笑ってあたしは理央を見た。


イジメられた格好そのままで教室へ向かったのは、着替えの体操着が教室にあったからだった。


5時間目の授業をしていた古典の先生は目を見開いてあたしを見た。


授業が終わると同時に担任の先生に呼び出しをくらい、何があったのかと執拗に質問された。


けれど、あたしはアンミたちの事は話さなかった。


アンミたちからの復讐が怖かったのではない、これからあたしたちがやろうとしていること考えると、安易に名前を出さない方がいいと思ったからだ。