「あら芽衣、早起きね。お母さんが一緒に暮らしていた頃はもっと寝坊だったのに」


そう言ってあたしを見るお母さん。


「お母さん……なんで?」


あたしはその場に立ち尽くして呟くようにそう聞いた。


「あの女の方が亡くなって、家事とか大変だろうと思ってね。今朝早くに来たのよ」


そう言い、優しくほほ笑むお母さん。


あの女もお父さんも家事なんて1つもやってこなかったから、大変でもなんでもない。


あの女が死んだっていつもと変わらない。


だけどあたしはお母さんに抱き着いていた。


こんなに至近距離でお母さんの香りを感じたのは久しぶりのことだった。


「ありがとう、お母さん」


「あら、そんなに喜んでもらえるなら、お母さんこれから先もお手伝いに来ちゃおうかな」


冗談っぽくそう言うお母さんにあたしはパッと顔を上げた。


「そうしてよお母さん! ずっと、手伝いに来て!」


「芽衣ったら、急に子供に戻っちゃったみたいね」


お母さんはそう言ってクスリと笑ったのだった。