「よぉ、アンミ」


龍輝がアンミの机の前に立ってそう言った。


アンミは龍輝を見上げる。


この2人がかつて恋人同士だっただなんて、きっと誰も思わないだろう。


そのくらい、アンミは龍輝の前では怯えきっていた。


龍輝の強さを、アンミが一番理解している証拠だ。


「芽衣の事を殺そうとして石段から落ちたんだってなぁ!」


龍輝がそう言い、豪快な笑い声を上げた。


アンミは振り向いてあたしと視線をぶつけた。


アンミの表情はとても冷たくて、何を考えているのかわからなかった。


その冷たさに思わず背筋が寒くなる。


何を考えているのかわからない表情ほど恐ろしいものはない。


アンミはまたあたしに襲い掛かるかもしれないのだ。


ハガキを使っても、死ぬまでは警戒を緩めちゃいけない。


あたしはそう思った。


「お前、いつでも度胸だけはすげぇよな」


龍輝の声にアンミが視線を前へと戻した。


アンミの視線から解放されたあたしはホッと胸をなで下ろす。