念のためを思って今日も持って来ていた『自殺カタログ』のハガキがある。


「そんな……」


「だって月乃はこの先ずっとイジメられるんだよ? 写真があるってことは、高校を卒業してもアンミたちから逃げられないってこと。わかってる?」


理央は幼い子供を諭すような口調でそう言った。


ずっと聞いていたくなるような、優しい声だ。


だけどその声は人を殺す。


死に追い詰める声だった。


あたしはスカートのポケットからハガキを取り出し、ブラウスの胸ポケットに入れていたペンを手に持った。


月乃があたしの行動に気が付いてこちらを向く。


よく見ればその顔はあちこちが腫れてきていた。


顔も体もひどく暴行を受けたことがわかりはじめる。


あたしは月乃にハガキとペンを差し出した。


月乃は目に涙を浮かべながらそれを受けとる。


「そこに名前を書く。それだけで月乃は救われる」


理央が追い打ちをかけてそう言った。


「本当に……?」


その質問には、あたしが答えた。


「本当だよ。月乃はすぐに実行に移してあげるから大丈夫。明日には、楽になれるから」