龍輝は月乃の首筋に赤いアザをつけると満足したように帰っていってしまった。


キスマークを付けることで俺の女だと認識させたのだろう。


月乃は龍輝から解放されると同時にその場に座り込んでしまった。


キスマークをつけられた首筋に手を当てて小さく震えている。


「あ~あ。これでもう逃げられないね」


あたしの隣にいた理央がわざと大きな声でそう言い、影から出た。


月乃がハッとしたようにこちらを振り返る。


あたしも理央に続いて姿をみせた。


「明日からは月乃がイジメのターゲットだ。それだけじゃない、龍輝には都合よく弄ばれるんだ」


理央はおかしそうに笑いながらそう言った。


その言葉に月乃の唇は震え始めた。


顔は青から赤へと変化していく。


まだあたしや理央から笑われることに抵抗があるようだ。


つい数時間前まではクラスカーストの上位にいたのだから、そのプライドは簡単には折れない。


月乃はあたしたちを無視して立ちあがった。


スカートについた土埃を払い、歩き出す。


しかし足元はフラフラで数歩行くとまた座り込んでしまった。


著しい状況変化に心も体もついて行っていないようだ。