「あの、波留って」




私がそう言うとあぁ、という感じで2人が顔を見合う。




「えーと、波留はね、FULLMOONのメンバーだよ」




「FULLMOONの」




「そうそう、特攻隊のリーダーで傘下は6チーム任せられてる。



あぁ、でも女嫌いだからあんま話せないと思うよ」




「うん、私でも話した事ないもん。



私が話しかけるだけで声聞いた事ないかも」





先輩達は聞いてないのに色々教えてくれた。




「波留か」




「玖波田(くばた)波留だよ」




柚莉先輩がそう教えてくれた。




「玖波田波留」




あの時みたバイクの持ち主の名をつぶやく。



ストンと心に収まった気がした。




「もう直ぐ切れ込みが見れるよ」



直哉さんから言われてハッと顔を上げる。



車はいつの間にかバイクの集団の真ん中あたりまで行っている。




少し見えにくいが前の方にはこの間見た黒いバイク。




「来るぞ」




そう、直哉さんが言うと信号が赤になり横に行く車が動きだす。



すると、1番前にいた黒いバイクがスピードを上げる。



黒のパーカーをバサバサと揺らしながら突き進み、車の群れへ突っ込む。




それ格好はまるで





「黒い翼が生えたみたい」





「そりゃそうだよあいつの通り名は堕天使。



飛ぶための翼を無くした神に愛された男。



堕天使はあいつの名前と同じぐらい周りに伝わってるぜ」




「ちなみに堕天使って付けたのはこいつな」




「だってあいつ喧嘩したあといつも悪魔!って言われてから可愛くしてやったんだよ」




堕天使ほんとにそんな感じだ。



黒い服装に黒い髪。



バイクに乗るとパーカーが羽のように広がる。



闇に溶け込んで相手を騙す。



まさに堕天使




「顔良し、センスよし、喧嘩強し!



まさにモテるために生まれて来た感じなのに女嫌いなんだよな」




「喧嘩も強いんですか?」





「FULLMOONでも1、2を争うぜ」




私とは違う。



たくさんのものを持っている。



少し、羨ましかった。