秘密の交換をしよう



ハルさんの視線には、どこか逆らえないような魅力がある。


うん、絶対にそうだ。



「なんで?」


「美穂ちゃんの言葉を思い出したんです。先輩たちが、ハルさんのためにオムレツを作る練習をしてるって。もし、先輩全員がそれを持ってきたら、卵料理尽くしになって、バランスが偏るかなって……」


「それで、別のメニューを考えようとしてくれたんだね。さすが、凛ちゃん」



今の流れで、どうやったらさすがってなるのか、わからない。



でも、怒ってなさそう。



「じゃ、今から作ってよ。僕、もう寝れそうにないし」


「は、はい!」



よかった……


私ももう寝れそうになかったし、今回は彼のわがままに救われたな。



私は台所に立ち、改めて冷蔵庫を覗いた。



「なにかいいの残ってた? こっちに来たばかりで、たいした材料買ってなくて。おまけに僕、料理しないし」



本人が言ったように、冷蔵庫の中にはいいものが残っていなかった。


卵もないし。



これで、どうやって目玉焼きを作れと……